1. 著作権とは
著作権とは、著作権法によって保護された権利です。著作権法は、著作権を侵害する者に対して刑罰を下すことまでを規定しています。著作権を侵害する典型例は、著作物を著作者に無断で使用することです。
著作権保護の機運は年々高まってきています。デジタル社会を迎え、著作物の複製はたやすくなりました。カラーコピー、デジタルカメラなどを考えれば、おわかりいただけると思います。また、複製された著作物は、IT社会においてインターネット等を通じて、瞬く間に広範に伝播されます。今日では、裁判所から著作権侵害に対する損害賠償命令などが頻繁に出される状況にあります。
著作権は創作物に広く認められる権利です。絵画、音楽、彫刻などの芸術品に限らず、漫画、イラスト、写真、文章など、広範囲に及びます。この権利は登録するなどの特別の手続きを経ることなしに創作した瞬間に権利が成立することに最大の特徴があります。
2. 印刷物と著作権
たとえば、文章、写真、絵で構成されたパンフレットを考えます。
まず、このパンフレットの中の文章、これは、著作著作物として著作権法によって保護されます。パンフレットの中の写真、これも写真著作物として著作権法によって保護されます。以前、地方公共団体がパンフレットに何気ない風景写真を使ったところ、無断使用で著作権を侵害されたとして写真を撮影した人から訴えられた例が大きく報道されたことがあります。
パンフレットの中の図案(イラストなど)、これも美術の著作物として著作権法によって保護を受けます。また、こうした著作物を配列して1つのパンフレットを作り上げるとき、その編集の創意工夫について編集著作権が認められる場合もあります。
このように考えると、印刷物は、多数の著作権の固まりと言っても過言ではありません。カーテンレール等のカーテン用副資材のカタログの掲載写真が写真著作物として、カタログ自体が編集著作物であると判断された裁判例(大阪地判平成7年3月28日・知裁集27巻1号210項)を考えれば、このことをより一層ご理解いただけるものと思います。
3. 著作物利用の制約
印刷物の中の写真などの著作物に関しては、それぞれの著作権者の承諾が別途必要です。
もちろん、印刷会社が原稿を制作した場合には、完成した印刷物を納品する以上、納品に先立って、それぞれの著作権者から著作物をその印刷物に利用することについて承諾を得ます。しかし、著作権者の承諾は、その印刷物に使用することについての承諾に限定され、それ以外のいかなる用途であれ「著作物を自由に使用してもよい」ということにはなりません。また場合によっては、印刷部数の指定が承諾の条件とされるなど、著作権者の意向によって著作物の使用制限が加わることもあります。
そこで、たとえば印刷物に使用された写真等を別の目的で使用する(HPに掲載するなど)といった場合には、あらためて著作権者の承諾が必要となるわけです。その際は一定の使用料を支払う必要があります。また、増刷する場合も同様に問題が生じる場合があります。
一方、著作権の譲渡を受ける(買取り)という方法もあり、この場合は著作物を自由に利用することができます。しかし、対価は高額なものになり、印刷物に掲載するためにわざわざ著作権を買い取ることは一般的な商慣行ではありません。
また、仮に買い取った場合でも、著作者人格権に基づく同一性保持権という著作権に固有の権利があり、著作物を無断で改変することは許されません。たとえば、温泉の写真の上に温泉に浸かる人を描き加えるなどのことは許されません。実際、雪山の風景写真に無断で巨大なタイヤの写真をはめ込んでパロディ作品を作成しようとした行為に対し、同一性保持権の侵害となるとした有名な最高裁判例があります。
4. 印刷物の作成過程と著作権
次に、印刷物の作成過程に目を転じてみましょう。原稿の制作から印刷・製本までを印刷会社に依頼するというケースを考えます。
そのような場合、印刷会社は発注を受けると、発注条件に応じて原稿の制作を開始します。その際、印刷会社が第三者に、これに使用する写真、図案、文章などの作成を依頼することがあれば、印刷会社がその第三者に対する原稿の作成依頼の段階で著作物の使用の許諾または著作権の譲渡の同意を得ることになります。しかし、先述のとおり「著作権の譲渡」は対価が高額となるため、「使用許諾の同意」が一般的になっています。
また、第三者の所有する既存の著作物を利用する場合もまた、その著作権者から使用の承諾を得ることになります。企画コンペにおけるデザインサンプルを作成するに当たっても同様で、写真や図案そして文章などをそれに入れるのであれば、それらの著作権者の承諾を必要とします。
そして、必要とする原稿が揃った段階で印刷会社は、印刷物の原版あるいは原版データを制作します。この原版あるいは原版データ作成の過程、つまり編集・制作場面で印刷会社の編集著作権が発生します。因に、編集・制作と印刷・製本とを分離発注し、編集・制作までを請負った印刷会社が最終製品として印刷原版あるいは原版データを発注者に納品した場合も、特段の合意がない以上、この編集著作権は編集・制作までを請負った印刷会社に残ることになります。また、印刷物を納品することが目的の契約においては、原版や原版データはあくまで「中間生成物」であることから「その所有権は印刷業者にある」と解されます。
このように原稿作成あるいは収集の段階から、印刷原版および原版データ作成に至るまでの過程で、ひとつの印刷物に様々な著作権が絡み合ってきます。編集著作権や原稿の著作権の譲渡の合意なく、納品された原版あるいは原版データを再利用して増刷した場合や、印刷データや原稿の一部をHPに掲載する場合など、前記のとおり、著作権の関係で問題が生ずる場合がありますので注意が必要です。
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